昨年、厚生労働省により示された「新しい生活様式」。人との接触を減らすことが求められる中、自宅で過ごす時間は増加傾向に。読者にアンケートを行うと、「ここ一年で住まいに不便を感じている」という声が多数挙がりました。
「人々の暮らし方が変われば、求められる住宅も変わります」とは、京都橘大学工学部建築デザイン学科専任講師の半海宏一さん。読者の〝困った〟を解決する、これからの家づくりについて教えてもらいました。
イラスト/米光マサヒコ 「リビング京都」2021年5月22日号より
自宅でもアウトドア気分を楽しみたい
テラスやアウトリビングで外を感じて
自宅でも屋外を感じるスペースがあれば、より楽しく過ごせそう。「テラスやサンルームを設けてみては。それらを一体化して造る場合もあります」と半海さん。
「アウトリビング」として、リビングと続きでウッドデッキや広めのバルコニーを設けても。「バーベキューをしたり、風を感じつつ朝食を食べる、といったこともできますね。庭に植栽をほどこせば、緑が近隣からの目隠しになります」
1人になれるスペースがほしい!
個室が無理ならコーナーで
「在宅ワークのためのスペースがほしい」といった声のほか、多かったのが「家族が家にいることが増え、一人になれる空間がない」という意見。個室が作れれば解決ですが、難しい場合は「キッチンやリビングの端に、座って作業できる趣味や仕事のコーナーを設けて。廊下や階段下などのスペースを活用しても」(半海さん)。新築の場合、「リビングとダイニングを少しずらした造りにすれば、それぞれの部屋で視線を合わせず過ごせます」。
スペースの兼用を
「部屋を兼用で使うのも方法の一つ」と話す半海さん。「昼は寝室の一角、夜はリビングで仕事をするなど、他の家族が使っていないところの利用も考えてみては」
おうち時間が増えると光熱費が…
気密性アップで省エネ
省エネ家電などもありますが、家づくりでいうと気密性の向上が重要なポイントに。「窓には耐熱性の高い複層ガラスを用いる、壁や床下、天井には隙間なく断熱材を入れるなどの対策を」。冷暖房の効きがよくなれば光熱費も削減できますね。
一定の省エネ性能を満たす家の新築などに対しポイントが付与される「グリーン住宅ポイント制度」にも注目。ポイントは対象の家具・家電、食料品などと交換できます。申請締め切りは10月31日(日)まで。詳しくは国土交通省のホームページ=https://greenpt.mlit.go.jp/=へ。
家族単位だけではなく、個も大切にした家を
外出しづらいこともあり、家族の団らんの時間は持ちやすくなりました。「しかし、家族といえど一人一人の人間。家の中で〝個〟でいられる場所も大切です」と半海さんは話します。
「リビングとダイニングを別空間にする、個室や趣味に没頭できるコーナーやテラスを設けるなど、いっとき一人になれる〝隠れ場所〟が自宅に数カ所あれば、家族の息遣いを感じつつゆったり過ごすことができると思いますよ」
教えてくれたのは
京都橘大学工学部
建築デザイン学科専任講師
半海宏一さん
大学では「建築設計」「住居論」を教えるとともに、一級建築士として住居、店舗、駅などを多数設計