最近よく耳にする「サステナブル」。住宅建築の分野においても注目されているキーワードです。サステナブルな家とは? また、どのようにすればサステナブルな家づくりができるのか。京都工芸繊維大学准教授の木下昌大さんに教えてもらいました。
サステナブルとは
「持続可能な」という意味の英語。よりよい社会の実現を目指して国連サミットで掲げられた「持続可能な開発目標(※SDGs=エスディージーズ)」に基づき、さまざまな分野への取り組みが行われています。
※Sustainable Development Goals
サステナブルな家とは、環境に負荷を掛けず、長く心地良く住み続けることができるこれからの住まいのあり方です。サステナブルな家の根幹は、ハードとしての性能と〝愛着〟。住まい手が積極的に家づくりに参加することで愛着が生まれ、長く住み続ける原動力になります。
性能としては、夏は湿気が多く、冬は底冷えする京都の気候に合わせ、間取りや設備などで室温対策を行うことが特に大切です。また、地域の自然素材を使うことは、地元の活性化や環境保護にもつながります。例えば床柱に北山杉を使うなど、新しく建てる家にほんの一部でも京都の素材と文化を取り入れることで、地域と共生する豊かな生活が実感できるでしょう。
「京都は歴史ある神社仏閣や古い町家が残り、景観条例という規制も。設計の自由さは制限されますが、地域と共生するサステナブルな家が、風景の美しさを生み、町全体の価値を上げるということにつながります」と木下さん。
具体的に考えておくべきサステナブルな家づくりのためのポイントをまとめたので、これからの新築の参考にしてください。
将来を考えて長く住める、無駄のない〝家族サイズ〟の家を
人生設計を立ててみる
長い人生の中で、家族構成やライフスタイルは変化します。次世代までも住み継げる家をつくるには、今だけでなく将来を見つめた計画が不可欠です。
具体的には、まず自分なりに人生設計を書き出してみましょう。家族構成の変化やライフイベント、収入や支出の見込みなどを挙げてみると、必要な土地や建物の大きさ、どこにお金を掛けるべきかなどが見えてきます。
〝MAX〟を想定しない
人生設計をもとに、工務店や設計事務所などと相談。その際「子どもの人数分の個室を」「来客用の空間も欲しい」など、初めからあれもこれもと盛り込んでしまうと土地代や建築費がかさみ、ローンの負担が増えてしまいます。
生活の変化に合わせて増改築しやすいよう、プランをシンプル&フレキシブルにしておけば、その分の資金を改修やメンテナンス費用に回すことができます。
例えば下のイラストのように、新築時に吹き抜けだった空間を、子どもの成長に合わせて、元からある2階部分とつながるように床をつけて子ども部屋にリフォーム。子どもが巣立ったら、また吹き抜けに戻したという木造住宅の例もあります。
〝家族のサイズ〟を考える
既成の家の形に生活を合わせるのではなく、家族に合わせた家をつくることができるのが自由設計の醍醐味。
「リビングの大きさは?」「大きなクローゼットは本当に必要?」など、流行や概念にとらわれない家族サイズの間取りを検討しましょう。「なるべくコンパクト」を意識すると、同じコストでも素材や設備のスペックを上げられますね。
時間をかけてじっくり考えた分愛着がわき、長く住みたいサステナブルな家につながります。
ワンポイントアドバイス
責任を持って設計や施工を行い、建ててからも末長く家をサポートしてくれる工務店や設計事務所があると心強いですね。かかりつけ医を持つように「かかりつけビルダー」を見つけましょう。
教えてくれたのは
京都工芸繊維大学 工芸科学部
デザイン科学域 デザイン・建築学課程
准教授 木下昌大さん
持続可能な建築をテーマに研究・指導を行うとともに、一級建築士として公共施設や住宅等の建築を幅広く手掛ける。日本建築協会優秀建築2019、グッドデザイン賞2019、台北インターナショナルデザインアワード2019審査員特別賞等受賞歴も多数。