昨年、厚生労働省により示された「新しい生活様式」。人との接触を減らすことが求められる中、自宅で過ごす時間は増加傾向に。読者にアンケートを行うと、「ここ一年で住まいに不便を感じている」という声が多数挙がりました。
「人々の暮らし方が変われば、求められる住宅も変わります」とは、京都橘大学工学部建築デザイン学科専任講師の半海宏一さん。読者の〝困った〟を解決する、これからの家づくりについて教えてもらいました。
イラスト/米光マサヒコ 「リビング京都」2021年5月22日号より
花粉やウイルスが気になる…
玄関周りに一工夫を
「手洗いや入浴前に、家の中でウイルスを広めてしまわないか」。多くの読者が心配している点の解決案として、「玄関に入ってすぐに手洗い場を設ける住宅が増えています」と半海さん。あちこち触れる前にさっと手が洗え、来客時にも便利ですね。
「また、玄関周りに家族みんなのコートやかばんなどがしまえる収納スペースがあれば、外で付着したほこりや花粉、ウイルスなどをリビングに持ち込まずにすみます」
同様の理由で、宅配便や梱包のダンボールを置ける土間スペースを設けることも。
戸建てにも宅配ボックス
不在時でも宅配便などが受け取れるセキュリティー機能付きの宅配ボックス。マンションに多く見られましたが、戸建てでも玄関先に設置する人が増加しているそう。ネットショッピングをする人が増えて、ニーズが高まっているようです。
洗濯の手間をどうにかしたい!
〝家事室〟を設けてスムーズに
「洗濯物が増えて、干したり片付けたりが大変」という読者に知ってほしいのが〝家事室〟。半海さんによると、「浴室に続く脱衣室、洗面所のスペースは近年、家事室(ユーティリティールーム)として広めに設計されることが多くなりました」とのこと。タオルや衣類の収納、アイロンがけのスペースも作れば、脱衣から洗濯・乾燥・収納まで一室で完結。
「キッチンでいうと、食料などまとめ買いしたものを置ける広いパントリーが人気です。家事室とキッチン、パントリーを動線でつなげれば、家事がより効率的に」
屋外干しは減少?
サンルームなどで屋内干しをする人が増えているよう。「花粉やウイルスが衣類に付くのを防ぐため」という声のほか、「共働きで夜に洗濯を行う家庭が多いことも一因。乾燥機も多く活用されています」(半海さん)。
教えてくれたのは
京都橘大学工学部
建築デザイン学科専任講師
半海宏一さん
大学では「建築設計」「住居論」を教えるとともに、一級建築士として住居、店舗、駅などを多数設計