もしものときから日常まで 家族を守る強い家【Vol.1】

家づくりのポイント

2021年12月24日

家を建てるときには、自然災害や火事、シックハウス、家の中でのケガや事故など、住環境にまつわる、さまざまな心配ごとが出てきますね。家族の暮らしを守る「強い家」にするにはどうすれば良いでしょうか? 京都精華大学デザイン学部建築学科教授 葉山勉さんに、さまざまな不安を解消する家づくりの心得を教えてもらいました。


「強い家」にするための3か条

1.土地を選ぶ、土地を知る

「海や川が近くにある」「建物が密集している」など、周囲の環境によって想定される危険はさまざま。家は、その土地の気候風土に合わせて構造や設計を考えるべきです。土地探しから始める人は実際に足を運んでみましょう。

2.バランスの良い設計

バランスの良い家づくりを心掛けましょう。デザイン性だけを重視して家の形を複雑にしすぎると、構造面で安全性に不安が残ります。また、健康に配慮したつくりになっているか考えることも忘れずに。

3.メンテナンスのしやすさを重視

「家は傷むもの」と考え、手入れのしやすい素材選びや設計、点検口の設置などメンテナンスのしやすい家を目指しましょう。自分で保守管理する意識を持ち、家づくりの予算に修理費用も見込んでおくと心強いです。


Chapter1 もしものときに強い家

地震

地盤の強い土地に建てる

建設候補地があれば、一度現地を訪れ、近隣を見て回りましょう。図書館などで昔の地図を見たり、周辺の地形からその区画が切土・盛土・平坦のいずれなのかを調べるのもお薦めです。埋立地や盛土の場合は、土地がいつ盛られたのかも確認を。地震被害では地盤の強さが要となります。地盤改良の必要性や、方法・費用について知っておくと良いですね。また、工務店の耐震性能評価や地震への対策などを聞いておくことも大切です。

大切なのは壁のバランス

住宅建築では一般的な木造軸組工法、短い工期で品質が安定している2×4(ツーバイフォー)、広い部屋がつくりやすい鉄骨造など、住宅の工法はさまざまですが、強い家にするためには全ての工法において耐震壁の配置と量が重要です。1階と2階の壁を同じ位置・向きで配置することが理想です。とはいえ、間取りやデザインにこだわり、家の形が複雑になってしまうような場合は、建築士や工務店とよく相談を。

     

台風

基礎や床を高めに

国土交通省が公開するポータルサイト「重ねるハザードマップ」や自治体の防災マップなどで、建設地の危険性を確認しておきましょう。床上浸水が心配される土地は、盛土で基礎部分を上げたり、床を高く設計します。近年はバリアフリーの観点から玄関に高低差のない家を希望する人が多いですが、浸水だけでなくメンテナンスの面からも、床下50〜60㎝の高さを設けるのが理想です。

家の形はシンプルに 飛散物への備えも

気象庁の「過去の気象データ検索」で、建設地の過去の風の向きや強さをチェック。季節や家の密集具合、土地の高低などによっても風は変わるので、それらを考慮に入れた設計プランを。家の形状に凹凸があるとあおられやすいので、シンプルな四角い形がお薦めです。屋根や壁が飛ばされない工夫(あおり止め金具や防災瓦の使用など)、飛来物の被害を軽減する対策(窓に飛散防止フィルムを張る、雨戸や格子を取り付けるなど)も行いましょう。

火事

燃えにくく避難しやすい家に

住宅密集地では、外壁や軒裏、屋根材などに耐火仕様の建材を使うことが法律で義務付けられていますが、規制のない地域でも不燃性の建材を選ぶと良いでしょう。設計面では〝二方向避難〟ができる間取りに。例えば玄関と勝手口を反対方向に設ければ、どちらかから脱出できます。各部屋も二つ出入り口があればベター。2階はハシゴを常備したバルコニーを設けたり、窓から1階の屋根やひさしを伝って降りられるような設計の工夫を。

        

我が家の〝事前復興〟を

“事前復興„とは、災害が起きたときを想定し都市計画やまちづくりを推進する取り組みのことです。一般家庭においても、家を建てる段階から“事前復興„を意識し設計をすることで被害を最小に抑えることができます。「災害が起きたときどこから逃げるか」「泥棒が侵入しやすくないか」など、いろいろなストーリーを想定しておきましょう。

    

教えてくれたのは

京都精華大学デザイン学部
建築学科建築コース教授
葉山 勉さん

同大全学研究機構社会連携センター長。一級建築士の資格を持ち、京都市すまいまちづくり活動専門家なども務める。編著・著書に『子どもと空間』(京都精華大学創造研究所)、『中にはいってみよう(月刊「たくさんのふしぎ」2010年11月号)』(福音館書店)などがある。

「修理作業がしやすいよう建物は余裕を持って建てる」「床下などに潜り込んで点検できるようにする」など、新築時からメンテナンスに関心を持っておき、自分で保守管理する心構えを持ってほしいですね。メンテナンスの行き届いた家が、本当に強い家と言えるのではないでしょうか。」

京都でかなえる家づくり表紙※画像は2023年度版の表紙です

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