家を建てるときには、自然災害や火事、シックハウス、家の中でのケガや事故など、住環境にまつわる、さまざまな心配ごとが出てきますね。家族の暮らしを守る「強い家」にするにはどうすれば良いでしょうか? 京都精華大学デザイン学部建築学科教授 葉山勉さんに、さまざまな不安を解消する家づくりの心得を教えてもらいました。
Chapter2 日常を守る強い家
防犯
〝見通しのいい家〟は狙われにくい
建物の周りに死角をつくらないことが大切です。コンクリート塀ではなく格子のフェンスや低い生垣にしたり、侵入者が建物の裏に回り込めないような外構にしましょう。庭木や物置、バルコニー、屋根付きガレージなどは侵入の足場にならないように配置を。サッシやガラス窓、玄関ドアは防犯性能の高いCPマーク付きの建物部品を選ぶのも有効です。
湿度
湿度を制する者が健康を制す
人が快適に過ごせる理想の湿度は約50%。湿度管理を適切に行うことで結露を防いだり、アレルギーの原因になるカビやダニの発生を抑えることができます。換気システムは常に運転させ、こまめに湿度調節を。建材や内装材は、自然乾燥した無垢材や漆喰(しっくい)、珪藻土(けいそうど)など、調湿性に優れシックハウス症候群対策にもなる天然素材がお薦めです。
寒暖差
温度差をなくしてヒートショックを防ぐ
まずは住宅の高断熱・高気密化を。そのうえで、ヒートショックの原因となる空間の寒暖差をなくしましょう。部屋間の温度差は2〜3℃が理想。浴室や脱衣所、トイレなどに、浴室暖房乾燥機やエアコン、床暖房等を備え、リビングの温度は上げすぎないよう心掛けましょう。また、家全体を暖める床下暖房も、快適かつヒートショック対策として有効です。
湿度
転ばないためのこまやかな工夫を
家の中の段差をなくし、階段や玄関などつまずきやすいところは手すりを付けると良いでしょう。自動で点灯する足元照明もあると良いですね。子どもやペットがいる家庭は、階段や吹き抜けに柵や転落防止ネットを設置しましょう。転倒事故の多い風呂場は、浴槽の底や床に滑りにくい素材をセレクト。浴室のドアは外開きか引き戸にすると万が一、中で人が倒れても、外から助けやすいという利点があります。
教えてくれたのは
京都精華大学デザイン学部
建築学科建築コース教授
葉山 勉さん
同大全学研究機構社会連携センター長。一級建築士の資格を持ち、京都市すまいまちづくり活動専門家なども務める。編著・著書に『子どもと空間』(京都精華大学創造研究所)、『中にはいってみよう(月刊「たくさんのふしぎ」2010年11月号)』(福音館書店)などがある。
「修理作業がしやすいよう建物は余裕を持って建てる」「床下などに潜り込んで点検できるようにする」など、新築時からメンテナンスに関心を持っておき、自分で保守管理する心構えを持ってほしいですね。メンテナンスの行き届いた家が、本当に強い家と言えるのではないでしょうか。」