穏やかな日差しがたっぷりと降り注ぎ、
爽やかな風が部屋の中を通り抜ける──
快適な空間を実現するためには、 光や風といった自然の力が欠かせません。
より明るく、暖かく、 いつも新鮮な空気が巡る住まい。
そんな理想の家をかなえるための工夫について、一般社団法人 京都府建築士会 木造建築研究会の市川宣広さんにうかがいました。
【Vol.4】断熱・冷暖房で快適に
快適な室温を保ち、健康的な生活へ
光や風といった自然のエネルギーを住まいに取り入れることは、快適な温度の室内環境と結びついています。
日本の家は、昔から真夏の暑さをいかに和らげるかを命題として建てられてきました。例えば、昔ながらの京町家では、天窓や通り庭を設け、採光や通風を工夫してきました。明るくて風通しの良い家は、昔から求められ、つくられてきたものです。
また、冬の寒さ対策も含め、健やかな暮らしのために一年を通して家全体の温度をコントロールすることが欠かせません。例えば、近年問題となっている「ヒートショック」。ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋に移動するなど、急激な温度変化に血圧や脈拍が変動して、心臓や血管に大きな負担をかけることです。日本では国土交通省やさまざまな研究機関が、健康的で快適な室温は20〜28度としています。ちなみに、ヒートショック研究が盛んな欧米では、部屋の温度が20度から15度に下がった場合、疾病率が上がるという調査も。イギリスの保健省は、冬場の室内温度は21度を推奨し、18度を許容温度に設定しています。
快適な温度を保つことは、住まい手の健康を導きます。家の気密や断熱性能を高め、自然の力をうまく取り入れて、快適な温度を保つ工夫を住まいに施していきましょう。
自然の力と機器を使いこなし、快適性を
「パッシブデザイン」という言葉を知っていますか? 建物の構造や材料などを工夫して熱や空気の流れを制御し、快適な室内環境をつくりだす手法のことです。家の中に光や風をうまく取り入れることも、パッシブデザインの一つの考え方です。
この考え方は、実は新しいものではありません。前述の京町家もその一つ。しかし、近年は真夏に35度を超す日が続くなど、昔とは比べものにならないほど厳しい自然環境になっています。「真夏に窓を全開にして風を室内に入れたとしても、快適さはそれほど増しません。それよりも外気との接触を少なくし、冷暖房を効率良く使うほうが快適に暮らせると思います」と市川さん。
近年の高性能住宅では、仮に吹き抜けがあっても冷暖房の効きが良く、床暖房などと組み合わせることで、季節を問わず快適な室温が保たれています。「先人たちがつくり続けてきた日本ならではの家づくりの手法に、気密性・断熱性の高い設備を取り入れることが、今の時代に合った家づくりと言えるのではないでしょうか」
もちろん明るさや風通しの心地良さの基準は十人十色。住む人にとって快適であれば、それが一番良い住まいです。そして光や風などの自然の力をうまく得るためには、まずは土地をよく知ることが大切です。「地元の工務店や設計事務所は、長年京都で家を建て続けている、いわばその土地のプロフェッショナル。どんなささいな要望でも積極的に相談してみてください。きっとその土地が持つ自然の力を生かす提案をしてくれると思いますよ」
教えてくれたのは
一般社団法人 京都府建築士会
一級・二級建築士、木造建築士など、設計や施工分野のプロフェッショナルのほか、行政や研究機関の職員も参加する団体。会員は京都府下の支部を含め約1,800人。建築士向け講習会の開催、建築関係法令の周知普及、京都のまちづくりへの助成、空き家相談、伝統家屋や木造建築物の研究などを行っている。