家族構成や生活環境の変化とともに、住みやすい家の形も変わっていきます。
ライフステージごとのニーズに合わせ、リフォームでより快適な住まいに。
その具体例とポイントを京都美術工芸大学工芸学部 准教授の森重幸子さんに教えてもらいました。
【リフォーム前】
独立した接客空間を持つ旧来型の間取り
廊下や壁などで空間を仕切り、座敷などを設けた一昔前の間取りは、各部屋が狭く、家族の生活スペースを広くとれない点が大きな改善ポイントです。
それらの問題には、主に部屋同士をつなげることで対応します。ただし、壁や開口の位置を変更する際には、耐震壁(地震の揺れに対抗できる壁)の位置を確認し、耐震性の確保が重要です。現在の耐震基準を確認し、強度を上げることを考えましょう。
左の住宅を元に、夫婦二人のライフステージに合わせたリフォーム例を紹介していきます。
ケース2 親世帯と同居することに
プライバシーの確保と生活時間の差に配慮
高齢親と同居することになったら、荷物が増えるため収納スペースはなるべく広くとり、2世帯それぞれの部屋からアクセスできる場所に配置(①)。
各世帯の限られた空間を有効に使うためにも、室内を可動式の棚や収納で仕切れるようにします(②)。
スペースに余裕があれば2階にもトイレやミニキッチンを据える(③)ことで、互いが時間を気にせず使用できるように。2階は双方の独立性を保てる間取りにするのが理想的です。
POINT
- 収納は広く&互いにアクセスできるように
- 空間は可動式の棚や収納で仕切る
- トイレやミニキッチンを増設
ケース3 夫婦二人暮らしになったら
将来に備えつつ、交流を楽しむ空間をつくる
子どもが独立し、50〜60代で夫婦二人暮らしになったら、広い土間を設けても(①)。
また、和室は趣味を生かした教室・ギャラリーにするなど、友人や地域の人が気軽に遊びに来られるような住まいに。加えて、窓も大きな窓に替えるなどして玄関以外にも外から出入りできる箇所を増やしておく(②)。そうすることで、緊急時の対応や介護・家事サービスを利用する際にも柔軟な対応ができます。
夫婦の寝室を分ける場合は、互いの気配を感じられるよう部屋を行き来できる扉の設置を考えてみては(③)。
POINT
- 土間など、趣味を生かせる空間を広く
- 外からのアクセスを良くし、家を外に開く
- 夫婦の各部屋を行き来できる扉を設ける
教えてくれたのは
京都美術工芸大学 工芸学部 准教授
博士(工学)/一級建築士
森重幸子さん
設計事務所、京都大学研究員等を経て現職。京都市美観風致審議会委員などを務める。
個人住宅、集合住宅「平成の京町家東山八坂通(都市住宅学会業績賞他)」などの設計に携わるとともに、町家と路地に関する研究に取り組む。