穏やかな日差しがたっぷりと降り注ぎ、
爽やかな風が部屋の中を通り抜ける──
快適な空間を実現するためには、 光や風といった自然の力が欠かせません。
より明るく、暖かく、 いつも新鮮な空気が巡る住まい。
そんな理想の家をかなえるための工夫について、一般社団法人 京都府建築士会 木造建築研究会の市川宣広さんにうかがいました。
【Vol.3】風通しのよい家づくり
快適な家を考えるうえではずせないのが、温度をうまく保つこと。夏は涼しく、冬は暖かな住まいこそが理想です。最近では住宅の性能も向上し、高気密・高断熱の家が主流になっています。それとともに、風という自然の力を生かすことで、住まいはもっと快適になります。
また、健康をかなえる住まいの大きな要素の一つも温度。近年開催される住宅関連の学会・研究会では、温度についての話題が多く論じられています。風通しが良く、快適な温度を保てる住まいにするための工夫を考えてみましょう。
空気の性質を知って、風通しのよい家を
住まいの快適性を考えるうえで、風通しの良さは重要な要素。新しく家を建てる際に、積極的に活用したいのが卓越風です。卓越風とは、その土地で最も多く吹いてくる方角の風のこと。三方を山に囲まれている盆地・京都での卓越風は、年間を通して主に北側からの風。「北の山から吹く風を効率良く取り入れられるよう、部屋の配置などを決めるのがおすすめです」と市川さん。
また、風通しを良くするためには、居室をさまざまな方角に分けることも有効。居室を一方向にかためてしまうと、窓も偏り、風の抜けが悪くなるからです。南側に居間があれば、北側の洗面所に大きな窓をつけるなど、異なる方角に窓を設けることで、風がよく通るようになります。
風通しの良い家とは、室内に入った風をうまく逃がすことができる家のこと。それには空気の性質を利用することも大切です。空気は温められると上昇するので、高低差を利用すると効率的。「部屋の高い位置に窓を設けたり、吹き抜けや天窓をつくることで、空気が抜けるようになり、換気効果が高まります。吹き抜けがつくりにくい場合は、階段の踊り場に小さな窓を設けることでも、換気効果が期待できると思います」
風通りのよい間取り例
〈1F〉
●POINT
リビングとダイニングの間に可変性のある間仕切りを設けることで、寒暖の厳しい季節には閉め切って、居室の冷暖房効率を上げることができる。
階段下にも扉を設置。空気の流れを意図的に止めることができ、冬の寒い空気が2階から流れてくることを防ぐことができる。冷暖房効率もアップ。
〈2F〉
●POINT
家の南北に居室を設けることで、北から南へと京都特有の卓越風を取り入れ、風がよく通り抜けるようにしている。
風通しをよくするために
①部屋の窓の大きさに大小を付ける
②家の両側に窓を設ける
③高低差のある窓を設ける
④卓越風の吹く方角を知る
⑤居室を一方向に寄せすぎない
⑥吹き抜けや天窓をつくる
教えてくれたのは
一般社団法人 京都府建築士会
一級・二級建築士、木造建築士など、設計や施工分野のプロフェッショナルのほか、行政や研究機関の職員も参加する団体。会員は京都府下の支部を含め約1,800人。建築士向け講習会の開催、建築関係法令の周知普及、京都のまちづくりへの助成、空き家相談、伝統家屋や木造建築物の研究などを行っている。